シルク素材は、最も古い繊維といわれているのをご存知でしょうか。シルクの歴史はとても長く、昔はとても貴重であったため金と同じ価値があったといわれています。シルクにはどんな歴史があるのか紹介します。
意外と長いシルクの歴史とは
シルクは、およそ紀元前の20世紀頃に中国で使われ始めたといわれています。中国の皇女は、当時繭で遊んでいた際に、繭をお湯の中に落としてしまいました。しかしそれを拾い上げるた時に糸を操ったことが、絹糸作りの最初と伝わっています。また、中国の甲骨文字には、「桑」「蚕」「絲」「帛」などの文字があるだけでなく、殷・周・漢などの時代にできたお墓から蚕をモチーフに作られた模造がたくさん見つかっています。それほど昔から大切に扱われていた素材だということがわかります。
シルク生地が日本に用いられた背景
シルクを養蚕する技術は、中国で発達していましたが国外に持ち出すことが禁じられていました。そのために、ヨーロッパではどうにかして入手しようとたくさんのエピソードがあります。では、一体どのようにして日本にシルクが用いられたのか気になりますよね。
絹の織物が中国から他国へ伝わった際に、シルクの魅力に引かれたさまざまな国の商人は、度重なる困難に立ち向かいながら中国へ交易に行ったと伝えられています。皆さんも一度は「シルクロード」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。このシルクロードこそ、交易のために使われた道です。
日本に養蚕の技術が伝わったのは、紀元前3世紀~弥生時代の頃だという仮説があります。実は、この時代に北九州付近の遺跡から、シルク布の切れ端が複数見つかったことが報告されています。
シルクについての素朴な疑問
普段の生活で何気なく使っているシルクですが、意外と知られていないことがたくさんあることをご存知でしょうか。ここでは、シルクにおける素朴な疑問についてご紹介します。
絹はいまでも日本で取れてる?
日本国内にあるシルク製品の生産元は、約10%が日本で残りのほとんどは中国やブラジルから輸入しています。特にブラジル産のシルクは価格が高いのですが品質は高く人気があります。つまり、国内のシルクにおける需要の90%は輸入でまかなわれていることになります。
絹製品のほとんどは他の国からの輸入ですが、国内で生産を続けているメーカーもあり、 絹糸を作る製糸工場もあります。とはいえ、生産のコストが合わずに国内の養蚕家が少なくなってきており、純粋に国内で産まれる絹糸はなくなってしまう可能性も少なくありません。
絹って結局何なの?
絹は、フィブロインというたんぱく性の糸で作られた繊維です。衣類にも使われている高級な生地ですよね。とはいえ、蚕には1つ1つ違った個性があります。そのタンパク質は、力を加えて引っ張ることで、引き延ばされますが集束して繊維化します。繭一つは1500m程度の長さがある長繊維で、1本1本の分子は4億本の束となります。それらを2本合わせてつくられたものが絹繊維なのです。
繭はどのようにして出来るのか
繭は蚕が作ったものであることは伝えましたが、具体的に説明できる方は少ないです。繭は、蚕が口から絹繊維となる本体(フィブロイン)を吐きだします。その上側に潤滑油(セリシン)を覆うことで作られた殻です。なぜこの殻が必要なのかというと、蚕の体内で生成されるアミノ酸を排出しなければ成虫になれないから。蚕は繭の中で排出を行うことで、成虫へのステップを踏むことになります。
絹糸の太さはどのくらい?
絹糸から生地が生まれることは分かりますが、1本の太さはどれくらいなのか気になりますよね。生糸はとても細い繊維で、直径を計って太さ表すことは非常に難しいです。そのため一定の長さに対する重さで繊度を表しています。絹糸の太さは「デニール」で表していて、糸の長さが450mで重さが0.05gあるものを1D(1デニール) と決めています。つまり、同じ長さで0.1g(0.05g×2)あれば2Dとしています。
絹糸の細かい成分は?
絹糸の成分には、中心なる「フィブロイン」とそれを取り巻く 「セリシン」と言う物質から作られています。フィブロインは、基本的に繊維状のタンパク質で、2本のフィブロインの外にセリシンでのり付けします。
フィブロインは、とても高純度のタンパク質でアミノ酸が結合している大きな分子です。 フィブロインとセリシンは、お互いに異質のタンパク質として構成されます。これは他の繊維にはみられない独自の特徴とも言えます。この2つの違いは、フィブロインは水に溶けない性質ですが、逆にセリシンは水に溶けやすい性質があること。さらにセリシンには 「セリン」が人間の肌と同じくらい含まれてます。セリシンは自然界では、最も人間の皮膚に近い成分です。
絹の成分はなぜお肌に良いのか
なぜ絹は肌にいいと言われているのでしょうか。実は、絹繊維は人間の肌と同じくタンパク質で出来ているため、化学繊維等で見られる害がないからです。絹はツルツルとしていて着心地が抜群で、特有の光沢や肌触りです。衛生面が他の素材より優れていることがあげられます。
人間は、体温が1℃の変化をもたらすだけで生理機能に影響する恒温動物です。 身体の体温バランスを調整するために、体を動かしたり空調を管理したり衣服を着脱したりすることでおぎないます。絹では、吸放湿性が綿の約1.5倍も優れているので、常に快適な環境でお肌をサポートしてくれます。
絹はなぜ夏場は涼しく冬場は暖かいの?
絹は、夏場は涼しく冬場は暖かい環境をつくることが可能です。では、なぜ絹にはこのような機能が備わっているのでしょうか。絹繊維を細かく見てみると、三角形の構造になっています。その三角形の繊維が何本も重なり合うことで一本の繊維を作っています。実は吸湿性が優れている理由は、この重なり合った繊維たちの隙間がポイントなんです。
この隙間は、身体から出る汗を吸収して衣類の外側へと放湿してくれるので、肌の温度を一定に保つことが可能です。そのため夏場に汗をかいても肌表面は絹の吸湿性により快適な肌環境をつくることができます。逆に冬場は肌から体温が逃げだすのを繊維の隙間が保持してくれるため暖かく過ごすことができます。
例えば、南極や冬山などの寒さに厳しいところに行く人は、シルク生地の下着を着用していることがほとんどです。薄い下着とはいえ、暖かさを保持する機能があるので分厚い衣類を何枚も身につける必要がありません。
絹はなぜ黄色く変色するのか
絹は時間の経過にともない、黄色くなってしまうことがあります。例えば、長い間タンスの中にしまっておいた白生地がいつの間にか黄色く変色してしまったなんて経験はありませんか?実は、これは絹が持つ唯一の欠点といえます。
絹には太陽の光による紫外線によって黄色く変色してしまいますが、主な原因は絹を作っているフィブロインです。フィブロインの中に含まれるアミノ酸は、空気中にある酸素や紫外線の影響で酸化や分解を繰り返しメラニンに変わってしまいます。人間の皮膚も日に焼けると肌が黒く変色してしまいますよね。それと同じ原理なわけです。この反応は、内側に紫外線などの有害物質をこれ以上取り入れないようにするための防御機能です。
シルクは紀元前から語られるほど長い歴史がある
今回の記事では、シルクの歴史について紹介しました。シルクの歴史は紀元前から語り継がれるほどながく、「シルクロード」という名前が付けられるほど愛されている生地です。